大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)102号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決にこれを取り消すべき違法の点が存するかどうかについて検討する。

1 成立について争いのない甲第四号証、第六号証によれば、本願明細書には、その特許請求の範囲に、前示当事者間に争いのない本願発明の要旨(事実摘示第二の二参照)のとおりのことが記載され、本願発明の実施例を示す図面を添付したうえ(その第一図ないし第八図は別紙図面(一)のとおり)、発明の詳細な説明には、次の趣旨が記載されている。すなわち、本願発明は、熱可塑性プラスチツク又はその発泡体からなる平板を使用して、底面部が多角形の溶着箱を溶解・成形溶着する溶着成形機に使用する多角形金型を提供することを目的とするものであり、本願発明の多角形金型は、別紙図面(一)第四図に示されるように平板をV字溝11に溶解し、同じく接合面12に溶断して、直ちに側面部9を折り曲げ、同第五図に示されるような溶着箱を成形するための溶解平板を作ることを目的とするのであるから、同一肉厚の平板に異なる深さの溶解、すなわち、V字溝の溶解と接合面の溶断を一つの金型で同時に行う必要上、本願発明の金型では、突起条に上下の段差が設けられ、V字溝11の溶解を目的とする突起条は上段に、接合面12や外周へりの溶断を目的とする突起条は下段に設置するとの構成が採られる(甲第四号証四頁八~一二行目、同六頁一一行目~七頁四行目)。本願発明の金型によれば、多角形突起条1でV字溝11が溶解され、側面突起条2で接合面(及びコーナー片10)が溶断される(同五頁一二~一三行目、一七~一九行目)。つまり、該金型を取り付けた溶着成形機の定位置に平板をセツトすると、該金型は平板を別紙図面(一)第四図のように溶解して、底面部8と側面部9とをV字溝によつて区画するとともに、コーナー片10を溶断することとなり、このように溶断された平板は、V字溝11から側面部9が折り曲げられ、コーナー片10を溶断カツトした時にできた側面部9端部のカツトへりを接合面12として溶着成形されて、同第五図のような溶着箱13が得られる(同八頁二~一二行目)。右の溶断に供する平板として、あらかじめコーナー片10を断裁してあるものを用いれば、コーナー片10が出ないのはいうまでもないし、また、箱の展開面より広いものを用いるときには、側面部9の外周へりを区画し溶断カツトするために外周面突起条14´が必要となる(同八頁一二行目~九頁二行目)。しかして、右において溶着箱というものは、箱の底の折曲部つまり多角形突起条1で溶解してできたV字溝11の溶解面同士が密接した部分と、隅の接合部つまり側面突起条2で溶断してできた隣接する接合面12の溶断面同士が密接した部分が、ともに溶着した箱を意味するものである(同一〇頁一八行目~一一頁四行目)。

2 右認定の事実によれば、本願発明の金型における側面突起条は、成形すべき箱の展開形を材料たる平板から分離切断する機能を果たすことを妨げられるものではないけれども、その不可欠の機能は、成形すべき箱の側面部の両端を溶断面として形成し、これを接合面として隣接する側面部同士をその端部で溶着し得るような形状に平板を溶解することにあるものと認められる。これに対し、成立について争いのない甲第二号証(第一引用例)によれば、第一引用例記載の切抜き装置における切断部材7は、積層プラスチツクシートを成形すべき容器の展開形の外周縁に沿つて切断するための部材にほかならず、その切断面が溶断面として得られることは明らかではあるが、該溶断面を溶着することにより容器を成形することに資することについては、第一引用例にはなんら記載されていないし、もとよりその旨示唆するところもない。

してみれば、本願発明の金型における側面突起条は、成形すべき箱の側面部の端部同士を溶着させて接合すべく、該端部を接合面として溶断面に形成することを目的としているのに対し、第一引用例記載装置の切断部材は右目的を有しない点において、両者の間には差異が存するものというべく、両者がともにプラスチツク平板に溶断面としての切断面を形成するものであるからといつて、右目的の相違が存することを否定することはできないものである。

右のとおり、本願発明の金型における側面突起条は、成形すべき箱の側面部の端部同士を溶着すべく、該端部に接合面としての溶断面を形成することを不可欠の機能とするものであるが、他方、該機能の中には、側面突起条によつて直接不要のコーナー辺を切断分離する場合であると否とを問わず、箱の成形に必要とされる展開形の形状に応じて、その外周縁の形状及び側端面の形状を決定する機能が含まれていることは明らかであるから、この点においては第一引用例記載の装置における切抜き部材と共通するところがあり、両者を対比して検討することには、なんら不当とすべき点はないものといわなければならない。

3 ところで、成立について争いのない甲第三号証(第二引用例)によれば、第二引用例には、審決認定のとおりの箱状クツシヨン材の成形装置が記載されており、この点は原告も認めているところである。該箱状クツシヨン材は、側面部端同士が溶着されていない点において本願発明の溶着箱と相違するものではあるけれども、その底面部と側面部とは、本願発明の溶着箱におけると同様、V溝形成部材によつてV溝溶融面を形成し、該部分を折り曲げて溶着するようにしたものである。しかも、成立について争いのない乙第一号証、第二号証に弁論の全趣旨を総合すれば、プラスチツク相互の接合に当たつて接合面を加熱溶融させて溶着することは普通に知られていたところであり、プラスチツク平板の端部同士を溶着させて箱状体に成形することも既に知られていたことであると認められるから、このような技術水準を考慮すれば、第二引用例の箱状クツシヨン材が開示されている以上、単に底面部と側面部とをV溝溶融面を形成のうえ該部分で折り曲げて溶着するにとどまらず、側面部端同士をも同時に溶着して、本願発明の溶着箱を得ようとの発想に想到することには、なんら格別の困難はないものと認められる。

4 右のとおり第二引用例から開示・示唆されたところを考慮して第一引用例の記載に接すれば、第一引用例記載の切抜き装置は、一個の金型をもつてプラスチツク平板から容器の展開形を切り抜く装置にほかならず、そのV溝形成部材をもつて折り曲げ溶着部を形成し、その切断部材をもつて外周縁を端部同士の溶着に適した形状に形成できる装置に転用する程度のことは、当業者が容易に推考できる範囲を出ないものと認められる。その際、V溝成形部材と切断部材とをどのような相互関係で配置するかは、成形すべき箱の展開形の外周縁の形状、折曲線の配置状況に応じて当業者が当然考慮すべき設計上の問題であり、これを本願発明の多角形突起条、側面突起条のように配置することになんら格別の困難はないものといわなければならない。

しかして、このように第一引用例記載の装置を溶着箱の成形に適用することが容易に推考できる以上、これによつて溶着箱が高い生産性で提供されるからといつて、これをもつて本願発明に格別予測できない特別の作用効果があるものということはできないところである。

5 以上のとおりであるから、本願発明をもつて第一引用例及び第二引用例の記載に基づき当業者が容易に発明をすることができるものであるとした審決の判断に誤りはなく、原告の取消事由に関する主張はいずれも結局において採用できない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註その一〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

突起条先端の稜線が多角形稜線を形成し、その多角形稜線の頂点部において相互に連結している中央の多角形突起条と、その多角形突起条のすべての頂点部のところに先端の側面稜線が左右対称な位置に突設された二本一組の側面突起条のみからなり、側面突起条は多角形突起条より突起して、二つの突起条の間に突起差がある金型、すなわち、該金型を平面上において側面からみると、多角形突起条先端の多角形稜線は上段にあり、側面突起条先端の側面稜線は該多角形稜線より下段にあつて上下二層に段差がある金型であり、各突起条には加熱装置を付設してなる多角形溶着箱を成形するための溶着成形機の多角形金型(別紙図面(一)参照)。

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(一) 本願発明

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(以下省略)

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